山下昇平展 公式サイト | 開催情報・プロフィール | WEB対談 「東村アキコ×山下昇平」
山下昇平個展「雨と舟」公式ホームページ。開催日:2017年11月3日〜11月19日まで、京王線代田橋より徒歩4分の大吉市場にて開催! 正気と狂気のあわいを往来する、この芸術を瞠目せよ!
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WEB対談 「東村アキコ×山下昇平」

第5話「主菜は英雄のお肉って展覧会」

東村アキコ×山下昇平 対談
山下昇平
山下昇平
山下昇平
山下昇平
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山下昇平 お面
山下昇平
山下昇平 造形
山下昇平
山下昇平
山下昇平
山下昇平
山下昇平
山下昇平 お面
山下昇平 お面
東村:(スマホで最近の山下作品を見ながら)これ、何?
山下:お面です。
東村:お面? すごいね。おお、めっちゃいいじゃん。へえ、へえ、へえ~。もう売れっ子なの? 昇平は。あ、そういう売れっ子みたいな概念はないのかな、アートの世界だと。
山下:売れてはいないと思いますけどね。

――出版物の挿絵とかヴィジュアル的なものでは、もうあるジャンルでの売れっ子ですよね。知らない人はいないくらいの。

山下:仕事はだんだん増えてきてはいます。
東村:へえ、すごいね。
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山下:(ある作品の写真を見せながら)これは頭の中から声が出るようにしたんですけど。
東村:うん。
山下:ずっと「なんとか食べたい」って言い続けるっていう(笑)。
東村:へえ(笑)。
山下昇平 幸せ受信

――(笑)。そういうのも天才が言うと「なるほど」ってなるのかもしれないですけど、その作品もパッと見、普通の人が見たら、普通に見えちゃったりするじゃないですか。その“すごさ”っていうのはなんて説明したらいいんですかね。

東村:ただグチャグチャしたものを作ってるわけじゃなくって、ちゃんと美しいものが好きっていうのが、基本的にはものすごくある子なんですよね。エキセントリックぶりたい人っていうのは、狙って異様っぽくするっていうか。人形を作るにしても、わざとグッチャグチャの顔にしたり、内臓が飛び出していたり、そういう「俺って狂ってるだろ」みたいな感じにしてくるんですけど、私はそういうのは「偽物だな」って常々思っていて。絵とかを見ても、わざと異形のクリーチャーを描くというのはすごく「ダサいな」って思うんです。
昇平の場合、根本的には、万人が見て美しいと思うものが正義だっていう考え方をする子だと思うんですよね。だから、クリーチャー好きとかではないんですよ。私はそこがすごくいいなって思ってて。昔、「どんな女の子が好き?」って聞いことがあるんですけど、「プロポーションがいい子、スタイルがいい子が好きですね」とかって言ったんですよ。そのとき、私ものすごくびっくりした。「ああ、そういう気持ちはあるんだ」って思って。
昇平の作品は形がきれい、美しいんですよ。SFっぽいところもあって。弐瓶勉さんの『シドニアの騎士』っていう漫画があって、それと雰囲気がすごく似てる気がします。きっと弐瓶さんも、クローンみたいに美しい女性がバーッているのが好きなんだろうなって思うんです。そういう感性の人って、たぶん本物だなって。醜い、グチャッとしたものが好きだなんてね、そんな人、絶対いないと思うんですよ、大昔から。それこそ原始時代から。いろんなものが正しい位置に配置されているもののほうが、見ていて快感じゃないですか!
だから、昇平の作品って暗かったり怖かったりしても、女の子はすごく可愛いし、子どもも可愛いし、“美”じゃないですか、完全に。だからこそ、「そこに狂気を孕んでいてかっこいい」ということでしょ。狂気ばっかりが前面に出てくる人は偽物だと思うんですよね。

――今のお話で思い出したんですけど、『ダニッチ・ホラー』を作ってるときに、「怪物の模型で見たことのないものを作ってください」って頼んだんです。「“これ、もう全然見たことない”ってものを作って」って。そうしたら、山下さんが「見たことがないものは、人が見ても何かわからないんですよ」って。たしかにそうですよね。

山下:前に言ってましたね、そんなこと。
東村:すごい! なんか哲学的だな。

――“山下語録”のひとつですよ。

山下:へえ、いいこと言いますね(笑)。

――まあ、それくらいですけどね(笑)。

山下昇平 ダニッチの怪
東村:そうね、なるほどね。昔、なんか一つ目の猫の話をよくしてて。こんな話、していいかどうかわかんないですけど、何かの遺伝子異常で、たまに目がひとつの猫が生まれてくるって。サメとかでも、目が1個の奇形のサメが深海から見つかったり。その一つ目の猫を、大学のときに見つけたんだよね?
山下:大学に入学したばっかりのときですね。

――見つけた?

山下:見つけたというか、生まれてすぐ死んだのがいた。
東村:死んじゃったんだけど、それを見て「めっちゃ可愛いんですよ!」って言ってて。見ると「うわっ」てなるけど、でも「すごく可愛い」って。
山下:可愛いし、スケッチしたんですよ、その猫を。せっかくだからスケッチしようって友達と言って。
東村:普通します? スケッチ。
山下:直接スケッチすると怖い絵になるんですけど、実物を見ずに思い出して描くと可愛い絵になるんですよ。
山下昇平 一つ目の猫
東村:それもある意味異様だけど、たとえば漫画のキャラクターでそういうのがいたりすると、案外可愛かったりするのかもしれないっていうところがあって。ギリギリのラインだと思うんですけどね。昇平は「オバケが怖い」とか、そんなのもないんでしょ?
山下:怖いですよ。
東村:そうなの? 何が苦手とか、何を見たら嫌だなというのはあるの? たとえば、私は虫が嫌いなんだけど、そういうのとかはあるわけ?
山下:ありますけど、意識してないですわ、あんまり。
東村:私、虫全般がすごく苦手なんです。ある日、昇平が学校にブローチをつけてきて、よく見たらそれ、クワガタなんですよ。しかも生きてる。生きたクワガタをガシッて掴んで、「はよざいまーす」みたいに。「何それ!?」って言って見たら、モゾッて動いて、ギャーッみたいな感じで。でも昇平は冷静に「ブローチみたいでしょ」みたいな(笑)。だって、高校生ですよ。そんなこと普通します? しかも、うちの高校って結構進学校で、わりとイケてる高校だったんですけど(笑)。
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山下:ありましたねえ。ああ、でもゲジゲジとかは嫌いですよ。グッチャグチャって。
東村:醜いものが嫌なんでしょ?
山下:いや、僕、急に動かれるとダメなんですよ。
東村:そういう話じゃなくってさあ。だって、生き物ってだいたい動くでしょ。普通の人が「気持ち悪い」って思うものがあるじゃない、毛虫とかさ。そういうのを見て、昇平が「うわっ」とか言ってるの見たことないなって。
山下:いや、気持ち悪いんですけど、自分の「気持ち悪い」っていう気持ち自体が面白くて。「何を気持ち悪いと思ってるんだろう?」と思って、それを見たくなるんです。自分の気持ちの中では、何を見て気持ち悪いと感じるのかなとか思って。
東村:ああ、そうそう、これが昇平っていう感じ(笑)。
山下昇平 white
山下昇平 Black

――ゲジゲジはなんで嫌いなんでしょう?

山下:脚がいっぱいあるからですね。でも、ウニャウニャって動いてるところは、ゲジゲジがゆっくり動いてくれるんだったら眺めて、「あー、気持ちわるっ」って思いながら観察して、「ああ、自分はこういうもの見ると気持ち悪いんだな」っていうのが喜びなんですよ(笑)。

――さっき弐瓶勉さんの名前が出ましたけど、僕も絵のレベルで弐瓶さんに通じるものがあるなって、最初から思ってたんですよね。

東村:似てますよね。弐瓶さんもわりとこれ系の感じなんですよ。弐瓶さんと話してても、なんだか昇平と話してるみたいな気になる(笑)。
前に弐瓶さんと居酒屋へ行ったときに、牡蠣とレバーを頼んだの。私、レバーが好きで、レバーフライを頼んだんだけど、弐瓶さんはどっちも食べなくて。それで、「弐瓶さんって、牡蠣もレバーも食べないの?」って聞いたら、「俺、フィルター系は全部食べれないんだよね」って。
山下:フィルター系、あー(笑)。
東村:面白くない? これ(笑)。それで爆笑して。動物の内臓も、牡蠣の内臓の部分も、基本的に濾過する部分だから、みたいなことだと思うんですけど、それをギャグで言ってるわけじゃないんですよ。弐瓶さんが「フィルター系は海の悪いものがそこに溜まってるから俺は食わない」って真顔で言ったときに、「この人、普通じゃないな」って思って。私はこんなこと考えないなって(笑)。

――その発想はないですよね。

山下:フィルター系、おいしいけどなあ(笑)。
山下昇平

* * *

東村:今度個展をやるんでしょ? ちょっと真面目に個展の話もしたほうがいいよ、あなた。(ポスターを見ながら)「主菜は英雄(えいゆう)のお肉」?
山下:「ひでお」とも読みます(笑)。読まないところも含めていいかなって思って、あえて読まないようにしてるんですけど、僕は。
東村:何、「主菜は英雄のお肉」って。「ひでお」って人がいるの?
山下:「ひでお」って言うと、身近になるじゃないですか。で、「えいゆう」って言うと、遠い存在になるじゃないですか。その曖昧なところがいいなって思って、このタイトルにしたんですよ(笑)。
東村:じゃあ、お肉っていうのは何?
山下:主菜というのも含めて、食べ物ですよね。日頃、生きてるうえで何食ってんだろうなっていう。
WEB対談 「東村アキコ×山下昇平」
東村:そうそう、私、昇平の作品に作品名をつけてあげたことがあるんですよ、何回か。覚えてる? この人、作品にあんまりタイトルをつけないんですよね。でも、観に来る人は普通の人なんだから、タイトルというのは“架け橋”だと。作品と私たちみたいな一般の人の。「だから、タイトルはつけんといかん」って言って。それでタイトルをつけてあげたんですよね。3つくらい。「603号室」とか、つけたでしょ、いくつか。
ちなみに、私の『かくかくしかじか』に出てきた日高先生も、たとえば絵を何かに出品するときに「東村、タイトルつけてくれー」って。あの人もこっち系の人だから、「タイトルつけられん」とか言って。でも、つけたほうがいい状況だったので、私がつけてたんですけど。これは「主菜は英雄のお肉」っていうタイトルの展覧会ってことね?
山下:そうです。
東村:これ、ちゃんと書いてくださいね、記事に。「主菜は英雄のお肉」っていう展覧会ですよ。
山下:ほら、ポスターの写真に食卓があるじゃないですか。
東村:英雄のお肉を、あの女の子が食べてるってこと?
山下:食べてる、みたいな。今回はインスタレーション(※)作りますよ。この作品はもうできあがってるんですけど、もっと周りの空間まで作ってやろうと思ってるんですよね。(※インスタレーション:美術作品の提示方法のひとつ。物体や装置などを配置し、アーティストの意向に添って構成された場所や空間自体を作品としたものを指す。)
山下昇平個展 ポスター
山下昇平個展
東村:(山下作品のひとつを指して)あの豚の魚のやつ、いいじゃん。可愛いじゃん。
山下:あれは「つぶらもの」っていうんです。

――その名前も人につけてもらったんですよね。

山下:はい。黒史郎さんって小説家に。最初は河豚(ふぐ)って言ってたんですけどね。ふぐって漢字で「河の豚」って書くじゃないですか。だから、「河豚可愛いわー、河豚」とか言ってたんですけど、黒さんが「河豚って名前じゃないよなあ」とか言って、「つぶらもの」っていう名前になりました。
山下昇平 つぶらもの
東村:うん、可愛いね。それに、なんかこのポスターのデザインもすごく素敵だけど、どなたにやっていただいたの、これは?
山下:これは坂野公一さんっていう方です。装丁家の。

――京極夏彦さんの本の装丁とかをやられている方ですよね。

山下:そういうすごい方に、「さかぽん、お願いします」って言ってやってもらった(笑)。
東村:いろんな人たちに協力してもらえてよかったね。
山下:ホントですわ。
山下昇平個展
山下昇平個展

山下昇平 個展
-主催は英雄のお肉-
ポスターデザイン
坂野公一

――子どもって本当に怖いものがわからないじゃないですか。山下さんの作品には、そういう感じのものがあるんですよね。

東村:あ、その感じ! わかります。

――興味を持っちゃうと、そのまま進み過ぎたら危ないよってところへ行っちゃう感じというか。

東村:そうそう、まさにそんな感じ。
山下:ギリギリ行けるっしょ、って(笑)。ギリギリがかなり危ないってことですかね。
東村:いやあ、これで昇平がバカ売れしたら、かなり自慢だなあ♪
東村アキコ×山下昇平

<終>

聞き手:品川亮(映画監督)/小森和博(宣伝プロデューサー)
写真撮影:小笠原学
着付け:近江川葉月(キモノ葉月)

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